ビン底メガネのおばあさん
 
 今、私は、とあるお寺の寺宝を公開している所で仕事をさせていただいています。
 
今日、その建物の中でいすに腰掛けていたら、ビン底メガネをかけて杖をついたおばあさんがやってきました。
展示してある掛け軸や仏像を一つ一つのぞき込んだあと私の前に来たおばあさんは、私の顔をのぞき込んで、
”これは何?・・・ああ、生き仏さんや・・・”と、言うのです。

それから、”撮影禁止”と書かれている札に顔をくっつけて、
”さ・つ・え・い・き・ん・し”と、ゆっくり読んだあと、国宝の仏像に手を合わせてトコトコ歩いていきました。

そして、その建物を出るとき、
”いい物がたくさんありますなあ・・・!目えが見えへんのが残念やけど・・・!”と、言って、カラカラ笑って出て行かれました。

☆あのおばあさんの目には、どんな風にどれだけ見えていたのかはわからないけれど、何だか楽しそうで、いろいろ不自由なことがあるはずなのにとっても幸せそうに見えました。

もしかしたら、仏様が姿を変えて何か大切なことを教えに来てくださったのでしょうか?
                (01.11.14.Wed)

by yayako
銀杏の思い出  
                  
 
 高校一年生の秋のある日、私の教室には何とも言えない銀杏の強い香りが漂っていました。漂っていたと言うより満ち満ちていました。

物忘れの良い私(こう言うといつも友人に笑われます・・・)なので間違っているかもしれないのですが、教室の横に木があったのは確かで、その木が銀杏の木だったような気がします。

その木から採ったのか、あるいはどこかから採ってきたのか定かではありませんが・・・銀杏の実を炒る強い香り。
それを取り巻く男の子達のざわめき。

その渦の外にいた私には詳しい様子は分からなかったけれど、決して”良い香り”とは言えない銀杏のにおいが妙にユーモラスで、あったかくて楽しそうに思えたのです。

 そのクラスには誠実で頭が良くて15,6歳の少年とは思えない”良くできた”彼がいました。彼は取っつきにくい秀才ではなくてクラスのみんなに慕われ愛されていました。
そして、気が付けばいつの間にか彼のことを”ぎんなん”と呼んでいるクラスメート。
なぜそう呼ばれていたのか、未だに分かりません。


 この季節になると、銀杏の香りに満ちたのどかな教室と、若くして大好きな山でこの世を去った彼のことを想い出すのです。      (01.8.31.Fri)
                    

琵琶湖の想い出      by yayako
 

  今日は、今年初めて琵琶湖へ行きました。

最近では夏の間に一度ぐらいしか行かなくなりましたが、子供の頃はひと夏に何度も連れて行ってもらいました。
海みたいに大きくてのどかで優しくて・・・。
父に泳ぎを教えてもらったのも琵琶湖でです。
初めて顔をつけて、少しずつ後ずさりする父の所まで一生懸命たどり着こうと頑張った私。
 
きれいなプールでスイミングスクールの先生に教わるのもいいけれど、風が吹き風景が生きている自然の中で父に教わって泳げるようになったこと・・・とっても幸せだなと今改めて思います。
 
朝早くから夕暮れまで1日遊んだのにまだ名残惜しくて、夕日に輝く湖面を見つめていたあの頃。
私の瞳は今よりずっとキラキラしていたのでしょうね・・・☆
(01.8.16.Thu)

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